義腕、義手などを手がけてきた英国Touch Bionics社が、世界初を謳う操作可能な生体義指ソリューション ProDigits を発表しました。基本的な仕組みは同社のこれまでの製品と同じで、筋電気センサや圧力センサを用い、体からの信号に応じて動作します。さらに、ものを適切につかむためのセンサも搭載。利用するのにいわゆる「手術」は不要で、筋肉信号や圧力に応じてどのような動作をするかは医者がワイヤレスに(Bluetoothで)設定できます。

ProDigitsではどの指をどのように補完するかカスタムメイドになっており、利用者にあった動作が可能になっています。利用者の声を転載すると、例えばMichael Baileyさんは「装着して5分間できちんと動くようになった」「まるで本当に繋がっているみたいで、まるで自分の一部分になったかのようだ」。

またMaria Antonia Iglesiasさんによれば、ProDigitsは「夢のよう」に動作し「これまでは水の入ったグラスを持つというような単純なことさえできなかった。しかしProDigitsのおかげで、簡単にできるようになった」。これまでは難しかった、字を書くことも可能になったとコメントしています。

病気や事故で指を失った人は全世界で120万人いると言われています。ProDigitsのお値段は3万5000ポンドから4万5000ポンド。日本円で500万円から650万円というのは誰もが簡単に払えるお金ではありませんが、同社は将来的に国民健康保険の対象となるよう取り組んでいくとしています。




[via Telegraph]


大きさ5ミクロンのバクテリアが大挙して380ミクロンの超小型歯車を回転させる......そんな壮大でミクロな実験を、米国アルゴンヌ国立研究所の科学者たちが成功させました。同研究所所属の物理学者Igor Aronson氏によれば「このシステムでは、バクテリアより100万倍も大きな歯車を回転させることができる」。動画を見れば一目瞭然ですが、たしかに歯車がぐるぐると回転しています。ふたつの歯車が反対に、かつ協調的に回転しているのがポイントです。

実験に利用されたのは枯草菌(Bacillus subtilis)というバクテリア。Aronson氏は4年近く微生物の研究に取り組み、枯草菌を使う方法に辿り着きました。ただ歯車を回転させるだけではなく、酸素の供給を止めることで動きをぴたりと止めることもできます。もちろん、酸素の供給を再開させれば歯車の回転も再開。お見事です。


「バクテリアの動きを利用し制御することは、微生物を用いたハイブリッド生体力学システムのさらなる開発にとって欠かせない必要条件である」とAronson氏。技術の応用先として、たとえば太陽光からより多くの光子を集められるソーラーパネルなどが考えられます。





[via Forbes]


Russell Turnbullさん(38歳)の右目が見えなくなったのは15年前のことです。ニューカッスルでバスに乗っていたところ男二人の喧嘩に遭遇、Turnbullさんは仲裁を試みましたが、一人の男が止まらずバス中にアンモニアのスプレーを吹きかけました。アンモニアはTurnbullさんの右目に直撃、それから彼の右目はLimbal Stem Cell Deficiencyと呼ばれる、ひどい痛みを伴う症状に悩まされてきました。まず目を開けるようになるまで二週間。以降も目が光に敏感すぎるため、車の運転さえできません。さらに治療や入院を繰り返す必要もあります。

そんなTurnbullさんを救ったのはNorth East England Stem Cell Instituteの医師たち、そして彼自身の左目でした。医師は健康な彼の左目から幹細胞を抽出、成長させたのちに右目へ移植することで、彼の視力を復活させることに成功しました。North East England Stem Cell Instituteはこれまで8人の視覚障害者の治療に成功しており、Turnbullさんはそのひとり。十分な臨床試験が行われたとはまだ言えないかもしれませんが、彼のように角膜の異常で視覚障害となる人は毎年800万人と見積られていますので、今後の一般化が期待されます。

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体の状態によって色の変化するコンタクトレンズ......と聞けばお洒落なイメージを思い浮かべるかもしれません。しかしカナダ、ウェスタンオンタリオ大学のJin Zhang教授が研究しているのは、お洒落のためではなく糖尿病患者のため。涙の中に含まれるグルコースに反応し、色を変化させるナノ粒子を開発しています。

血糖値が高くなると涙や尿に含まれるグルコースは増加します。そのため糖尿病患者はナノ粒子を埋め込んだコンタクトを着用することで、血糖値の変化が分かるようになるというのが一連の仕組みです。これにより血糖値の急な変化にすぐ気付くことができますし、血糖値測定のために針を刺して採血する必要もなくなります。ただしいつも見てくれている仲間、もしくは鏡が必要か。

同様の研究は他の大学でも行われており、コンタクトレンズではなくタトゥーにするという研究もありますが、ウェスタンオンタリオ大学はこのたび独立法人Canada Foundation for Innovationから20万ドルを超える研究費を獲得し、さらなる研究に弾みがついています。ナノ粒子の活用方法としては他にも、酸素や二酸化炭素、蒸気をモニタし、食品の腐敗を事前に防ぐ仕組みなどが考えられるところ。せっかくなので色も組み合わせで無数に選べるといいですね。


米国では毎日11名の人々が 喘息で亡くなっており、救急外来患者の1/4を占めています。1980年以来、喘息による総死亡率は50%上昇しています。
新しいiPhoneアプリのAsthmaMDは、Sam Pejham(医師・研究者)とSalim Madjdが、喘息患者たちを手助けすることを目的として開発されました。このアプリケーションは、患者が発作の日誌を付けることによって、発作の重症度、使用した薬剤等の記録を追跡するのに役立ちます。
しかし、AsthmaMDの最大の特徴は、ユーザーが同意すれば、自分のデータを匿名で同サービスに提供できることです。データは集約されて研究者たちの間で共有されます。同社はこれによって、医師や研究者による喘息の理解が高まり、発作の起きる時期を患者がより的確に予測する助けになる可能性があるといいます。
Madjdがこう言っています。
このアプリから集まってくるデータで何が可能になるかを想像してみてください。私たちは、患者の喘息に関する事象の起きた正確な位置と時間を知ることができるので、例えば地域の大気汚染状況や、天候の変化、さまざまな汚染物質の種類などとの相関を見ることができます。あるいは、ある都市の中に人口あたりの喘息重症度の高い地域があれば、そのことが地図上で明確にわかるので、近隣企業による公害の可能性があることを親に警告できます。さらにはこのデータを使って、不動産サイトと連携することも考えられます。親や将来の親たちにとっては、特定地域の喘息環境を知ることによって、今後住む場所を決める際により適切な判断を下せるようになります。
年齢、性別の違いによる医薬品の効果や、汚染物質によるさまざまなきっかけで起きる喘息への対応方法等に対する理解を高めるためにも利用できます。
喘息の発作を起こす可能性の高いユーザーに対して、類似の症状履歴を持つユーザーのデータを元に、リアルタイムで警告を発することも考えられます。行くゆくは、郵便番号とジオコードに基づいて喘息急発生の知らせをTwitterストリームに流すことも可能です。このアプリは、人々の生命に対して、これまでに例のない、かつ個人的なレベルで影響を与える可能性を持っており、これまで私が取り組んできた中でも特にやり甲斐のあるプロジェクトです。
この種のアプリは、今後益々増えていくでしょう。クラウドソーシングは道路にできた穴を直すのに最適です。しかし、さまざまな病気の理解を深めるために必要な情報を、医師に与えられる可能性も持っています。
東京農工大学大学院生物システム応用科学府の森島圭祐准教授は、昆虫の細胞のロバスト性(丈夫さ)に注目し、培養液の中で拍動し続ける昆虫の心臓の筋肉を動力源にするマイクロマシンを開発しました。



昆虫には血管がありません。循環システムが脊椎動物と異なるため、昆虫の心臓に相当する器官は「背脈管」と呼ばれます。背脈管がポンプとなって、体液を直接体内に送り出します。森島氏の研究グループは、ミツモンキンウワバという蛾の幼虫の背脈管を使い、微小アクチュエータ(駆動装置)を作製しました。
ミツモンキンウワバは背が少し透き通っていて、よく見ると背脈管が動いているのが見える。その背をさばいて背脈管を取り出す。ハサミで数回切った背脈管組織を、培養液に浸したマイクロピラーと呼ばれる微細な柱状突起が並ぶシリコン製シートに絡める。
ヒトやラットの細胞培養法はすでに確立したものがありますが、キンウワバの細胞培養には教科書がありません。培養液の研究に1-2年かかり、背脈管の細胞とマイクロピラーを接着させるノウハウも自分たちで開拓したそうです。
こうして背脈管を動力源にして90日以上マイクロピラーが並ぶ構造体を動かし続けることに成功しました。マイクロピラーは直径100μmで、縦11本×横11本、計121本がシート状に並ぶ。昆虫を使ったこの研究の革新性は、哺乳類の細胞のように37℃を維持する培養装置の中に入れることなく、25℃前後の室温でしかも培養液を全く交換せずに、長期間駆動したことです。単位面積あたりの駆動力も、駆動回数で考えた寿命も、圧電素子や形状記憶合金などを使う従来のマイクロアクチュエータと遜色ないといいます。



ウェットロボティクスを目指して
森島氏は6足歩行マイクロロボットも制作しました。6本のマイクロピラーに背脈管組織を絡めて、ひっくり返すと自律駆動型バイオロボットとなります。分速約100μm、つまり1分間に髪の毛の太さほど移動します。このバイオロボットは、培養液に浸しておけば化学エネルギーで電源不要で駆動する。しかも筋肉なので何らかの負担がかかり切れてしまっても自然に再結合=自己修復します。

昆虫細胞シートを開発する
細胞シート工学の第一人者、東京女子医大の岡野光夫教授の協力を仰ぎ、背脈管組織の細胞シートをつくる研究も現在進行中です。すでに森島氏は東大の北森武彦教授や田中 陽氏らとともに、この技術を使ってラットの心筋細胞シートをつくり、細胞シートの自律的に繰り返される伸縮を動力としてマイクロポンプを作ることに成功しています。哺乳類の場合、細胞同士の栄養や酸素のやり取りは毛細血管を通して行われるので、細胞シートを積層させると栄養や酸素が行き渡らず細胞は死んでしまいます。それに対していくつかの解決策が模索されていますが、昆虫の場合だと血管を必要としないので、酸素のやり取りだけ工夫すればよいのです。昆虫細胞シートを積層させる技術が確立すれば、目的にあった昆虫細胞アクチュエータをよりつくりやすくなります。





北海道大学の一角にニコンと大学が共同で設立した、バイオ先端研究と教育のための施設「北海道大学ニコンイメージングセンター」があります。ここを拠点にナノシステム生理学というを進める永井健治教授は、蛍光タパク質を使ってその仕組みを研究しています。

蛍光体は、光を吸収することでエネルギーを得て振動し蛍光を発生します。数ナノm程度のごく短い距離に別の色の蛍光体があると、その振動に共鳴し蛍光を発する。つまりエネルギーの移動が蛍光の色の変化によって観察できる。これを利用すると、細胞内でタンパク質がぶつかったり離れたりする様子や形が変わる瞬間が観察できます。




永井教授は世界で最も明るい蛍光タンパク質「ビーナス」、群青色蛍光タンパク質「シリウス」、紫外線を当てると蛍光色が変わる蛍光タンパク質「ファムレット」などを生み出し、世界的な権威として知られています。永井教授が開発した「ファムレット」は、紫外線による刺激で蛍光色が変化する特殊な蛍光タンパク質です。その性質を利用すると、細胞内の見たい部分にあるタンパク質だけを蛍光色を変えて照らし出すことができ、その動きの詳細な観察が可能になります。
北海道大学ニコンイメージングセンターは全国の研究者が申し込みをすれば利用できるそうです。今後、蛍光タンパク質は研究を大きく前進させる強力なツールになりそうな気がします。